家に突然親父がやってきた 「おぉー!!かっわいい俺の娘達よ−ーー!!」 わざとらしい程の明るい声に妙な寒気を覚える。 「これからパパと海に行くぞぉ−ーー」 「うそぉー!ヤッタ−!!」 喜び弾むみおりを見ながらも悪い予感は止まらない。 「あたしは…。」断ろうと口を開くと 「もう水着も買ってきちまったんだからなっお前も来いッッて」 力任せに引きづられ、まぁ今日ぐらいイイかと流されてみる。 父親の気紛れはいつものこと。 きっとこの悪寒や予感は気のせい。きっと、気の、せい。 佐伯が乗ってきた車はレンタルで借りてきたらしい大きなキャンピングカー みおりは喜んで中を物色している。 TVビデオやシャワールーム、冷蔵庫に簡易キッチン、そしてトイレ 広々とした車内はマキと佐伯が中に入っても充分な程に余裕がある。 大きなソファは車の中とは思えない程豪華だ。 「すごい」「すごい!すごーい!!」娘達の感嘆の声に佐伯は嬉しそうに微笑む 「来てヨカッタだろー?」2人の頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜながら出発の準備を始める。 荷物を纏め、ドアを閉め、はい「しゅっぱーつっ!!」 佐伯が後部車両に居るのに関わらず車が走りだす。 「えっ?!誰か居るの?お父さん!」運転手代わりに弟子の1人でも連れてきたのかと思ったその時。 「あーーぁぁ」バツの悪そうな顔で佐伯が運転席を見た。 マキの背筋に忘れていた悪寒が走る。 「はは、まぁそのな、色々あってな。」 佐伯らしからぬ気まずい沈黙。その時解った。あ・い・つが運転してるのか!! 「……あんた…坂本と一緒に来てたんだ…。」 「ダマすつもりは無かったんだっっ」頭の上で手を合わせて謝り倒している。 熟れた誤り方だ。さぞかし今までも女に頭を下げてきたんだろう。 「よく言う」マキは佐伯に冷たい一瞥をくれる。 みおりは運転席を確認した後、ソファの上で縮こまっている。 そーっと冷蔵庫を開けるとオレンジジュースを取出して「ジュースもらいま−す。」 と誰に鞆なく宣言し、飲みはじめる。 そんなみおりに絆されたのか、佐伯は開き直る。 「まぁもう出発したことだし、諦めて一緒に海に行こうじゃないかって」 あいつも今日は大人しく運転してるだろ?と耳もとで囁かれる。 確かに今日は珍しく大人しい。さっきから一度もこっちを見ていないし、声も聞こえない。 続いたりする。 ダメだ−限界が来た−。 以下次号 えくに                2004/6/20
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