また、離れてしまった。 セイバーの整備を終え、気分転換にと外の空気を吸うべく基地の外に出た。 潮風の冷えた風が遮るもののない強い日ざしと共にアスランに降り掛かる。 淀んだ格納庫の空気から介抱され大きく息をすいこんだ。 親しい人間もいない場所で何かする事も無く、一人で基地の周りを散歩する事にした。 パサッ どこかで聞いた音がした。 薄いプレートを規則的に動かしては風を切るような音 「トリィ」 高く澄んだ声色が頭上から響く。 慌てて顔を上げてその方向を見上げると、太陽光をもろに瞳で受けてしまい思わず目を閉じた。 パサッパサッ 次第に大きくなる、その音。 「トリィ」 風を切る音がアスランの周りをぐるりと回ると耳元に懐かしい声が聞こえる。 ゆっくり目を開けると、肩に止まった鳥ロボットがゆっくりと羽根を休ませていた。 懐かしさに目を細めると同時に、ハッと誰にも見られていないかと辺りを見回すと、慌ててトリィを胸に隠してセイバーのコクピットへ戻る。 システムの変更箇所のテストだとか何とか適当な事を言って中に閉じこもると、後ろめたさを感じながらも、ゆっくりトリィを取り出した。 見た瞬間から感じていた違和感。 「胸のパーツが取り替えられてる?」 いつもの黄色い胸パーツではなく、トリィの胸は淡い桃色のパーツに替えられていた。 キラだ。 核心的にそう思うと、居ても立ってもいられずに小さな鳥ロボットの端末を落とし、胸のパーツをソッと外した。 トリィの胸の中の小さなハートは新しく改良され奥に追いやられ、空いたそのスペースには小さな小瓶がひとつ。 小瓶の中には数えきれない小さな小さなハートの砂糖菓子がぎっしりと詰まっていて、小さなメッセージカードが添えられていた。 懐かしい2人の少女の文字が裏と表に書かれていた。 微笑ましくそれに目を通すと、大事な、一番目にしたかったメッセージがないことに気付く。 慌てて鳥ロボットの隅から隅まで目を通すが、肝心なそれは見当たらない。 メッセージカードをクルクルとひっくり返しては読み直し、目当ての文字の一つでもないかと目を皿のようにして隅々を確認する。 何もない。 そうだ、俺はキラじゃなくカガリを選んだんじゃないか。 何もないのは当たり前だ。 そう自分に言い聞かせつつも、ガックリと気落ちした心はなかなか浮上しない。 都合がいいと思われていても自分の気持ちにまだまだ整理がついていないのだ。 こんなイベントごとに何時までも落ち込んでもいられず、長い溜息をついてから小瓶の蓋のコルク栓を力を込めた親指で押し抜くと、コルク栓は勢い良く頭上モニターに弾け飛びシステムモニターのヘッドボードに転がった。 裏返ったコルク栓を見て俺は息を飲む。 ぐっと奥歯を噛み締めてから、コルク栓を両手で強く握りしめた。 世界が急に狭くなり孤立感が襲う。 あいたい。 離ればなれの彼の人を思うと瓶の中の砂糖菓子は苦かった。 |
もうすぐ3月っていうのは言いっこなし 05/2/25 |
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