ああ、こいつってこういう時に見せる顔がホントに綺麗だ。 褐色の肌が汗ばみ艶やかな照りを見せる。 深い沼の底のような綺麗な碧の瞳は適度に潤み日に照らされた水面のようだ。 つくづく俺はヨウランが好きなのだなと再確認した。 「え?」 少しだるそうに汗ばんで落ちた髪を掻き揚げると、事後の火照りを残しながらも醒めた目でこっちを見つめた。 「うん、だからさ、この間から俺、レイと付き合いだしたんだ。」 じっとその綺麗な瞳で俺を見つめると、ヨウランは溜息と共に瞳を閉じて俺から顔を逸らした。 ああ、残念だ。あの目で見つめられるのはとても好きなのに。 ヨウランが黙って上着を肩にかけるのを見て、俺も下に落とした下着を拾う。 サイドテーブルに目をやると休憩時間が終わるまで後30分程あるのを確認する。 もう少しゴロゴロしてたかったな。 でも、このような状況になっては流石に無理と言うものだろう。 彼はいつも優しくて、酷く大人びて見えていたから、今回も許してくれると思っていたのに。 「やっぱりダメか」 ぼそりと落胆の言葉を呟くと酷く冷たい眼差しで見つめられていることに気付いた。 「何が言いたいんだよ、シンは。」 いつもと変わらない淡白な物言いに少し安心しつつも、明らかに怒りを含んだヨウランの瞳と視線がぶつかると、珍しく胸がジクジクと痺れるように震える。 「報告、しとかないとな。と思って」 俺は自分自身も良く分からないし、余り言葉がうまくないから、何が言いたかったのかもハッキリしないんだけれど。 分かってくれないかな。ヨウランなら分かってくれると思ってたんだけど。 とりあえず、下着をつけると落ちそうになっていた枕を抱えてベッドの上で胡座をかいた。 俺の間抜けな答えに呆れてしまったのか、ヨウランは又ひとつ溜息をつくと背筋のきれいな、伸びやかな背を俺に向けてミネラルウォーターを口に含んでいる。 濡れた唇がグロスを塗った女の唇のようにぬめりと光って卑猥だった。 「違うだろ。俺が聞きたいのは、これから俺と、どうするかだよ。」 ヨウランは言葉を溜めることを余りしない。 気兼ねしない話し方は同世代の友人として心地いいし、何より話しやすい。 さり気ない言葉は決して乱暴ではなく、優しい気遣いを感じられる。 真面目で堅物で、意外に幼い我侭な口下手なあの男とは天地程差が有ると言っていい位だ。 「俺、ヨウランが好きだよ。」 うそじゃない。多分すごく好きなんだと思う。 「離れたくないし、側にいてほしい。」 ヨウランといるとあったかくなるんだ。余計なことを考えずに済むくらい。 俺は素足の指を手持ちぶたさに弄ぶ。ふと視界に入ったヨウランの足の指は力が入っていて、つま先が平べったく床にくっついていた。 「ただ、お前だけじゃ足りないんだ。全然空いた穴が埋まらないんだよ」 俺がそう言って見つめると、ヨウランは眉をハの字に曲げ困った顔で口の端をぐにゃりと歪めた。 湿気のこもった熱い吐息に触れて、初めて俺はバカなことをしてしまったのだと気付いた。 |
短いのに終わらなかったよぅ(泣) イラストのヨー君が美しくないのは単に技量不足−ー(TT) 04/12/30 |
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