-兄弟- 冷たいからだ vol 2
熱いモノが欲しい。最初は柔らかくて、後から堅くなるもの。
柔らかい口付けが欲しい。優しく甘く温かい。
身体に触れる金のイト。少し硬いけどサラサラと肌に馴染む。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。ほしい。
俺が、自分で無くしてしまったもの…
俺のせいで無くなってしまったもの…
「どうした。鋼の。」
今日は熱を出して折角の公務を(暇つぶしに呼び出しただけだが)
休んだと聞いて見舞いに来たが自室の前で蹲っている少年を見つけてしまった。
とんだ災難だ。
見舞いと称してサボりに来ただけだったのに。
「…大佐か」
ちらりと横目で私を見ると、わざとらしい溜息をついて又俯く。
「悪かったかね。私で。」
「コレでも忙しい中、君を見舞いに来たんだがね。」
そこまで言われて黙っている私ではないよ。鋼の。
「どーせ、サボりだろ。とっとと帰ってホークアイ中尉を安心させてやれよ。」
しっしと蹲ったまま私に手を振り追い返そうとする。
まぁ、たしかに。
「つれないね。鋼の。熱を出したと聞いていたが、それだけ話せられれば大丈夫そうだな。」
軽く2度程頷くが立ち上がる気配はない。
普段の彼を知っている分、明らかに変調であるのが見て取れる。
「弟君は、どうしたね。いつも騒々しい君の世話を焼いている彼は?」
ぐるりと見渡す。こんなに体調の悪そうな兄を放っておく弟ではない。
どちらかといえば、いらぬことすら心配するような仲の良い兄弟だ。
「部屋の中か?」少年は蹲ったまま答えない。
答えない少年に痺れを切らし、少年を抱き上げる。
小さい割に、機械鎧のせいか驚く程重い。意表を突かれたが落としてしまう程、無様な真似はしない。
「なっっっ、なんだよ!大佐っ!! 離せって!やだ!」
暴れることも普段と比べれば可愛いもの。どうやら本格的に調子が悪いようだ。
肘でドアノブを廻し脚で蹴るように扉を開くと無遠慮に中に入って行く。
部屋を見渡すと窓のカーテンは閉まったままで薄暗い。弟の方の姿は見えなかった。
『薬でも買いに行っているのか?』
「弟君はいないのか。…相変わらず色気の無い部屋だな。もっとこう…」
年頃の少年だと言うのに、本ばかりが目につく この部屋に享受をしてやろうとすれば噛み付かれる。
「ベットに、降ろしてくんない。さっさと。」
「あぁ、すまないね。」
礼の一つくらいは有っても良いとは思うがね。あくまでも、上司に運んで貰ったのだから。
口の減らないガキは、横抱きに抱いていた身体をそのままベッドに落としてやる。
「イッタ…」
突然落とされて息がつまったのか、大きく息を吐く。
上から見て改めて思う。熱でもあるのか顔が赤い、抱いた時の感触も確か少し汗ばんでいた。
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